高血圧ガイドライン2019 (hypertension guideline)

 今年の4月日本高血圧学会から高血圧ガイドライン2019が発表されました(JSH2019)。それによりますと75歳未満の高血圧患者の目標値は130/ 80mmHg、75歳以上の血圧目標値は140/ 80mmHgとされ、今までのガイドライン2014(5年毎に改定)よりもより厳しい目標値となりました。今まで血圧130〜140/ 80〜90mmHgは正常範囲の高目の血圧とされ、内服治療の対象ではありませんでした。2015年に米国で発表されたSPRINT試験というエビデンス(多くの高血圧患者の臨床データ)などから、ここまで血圧を下げた方が患者の利益になる(予後を悪化させない)と判断されたのです。このガイドラインに従えば今までより多くの日本人が治療対象となるため話題を集めています。

 ただしやみくもに薬を飲みなさいということではなく、無治療の方はまず生活習慣の改善が勧められます。それは①減塩(1日6g以下)、②運動(1日30分以上の散歩)、③肥満解消、などです。しかし、脳卒中をすでに起こしている方(隠れ脳梗塞含む)、糖尿病の方、蛋白尿を伴う慢性腎疾患(CKD)の方はお薬で確実に血圧を下げることが推奨されます(でないと再発したり合併症が悪化します)。高血圧症は殆どが無症状ですので(silent killer)「なんで薬を毎日飲まないといけないの」「血圧を計ってもいつも違う値なのでどう判断したら良いかわからない」「サプリを飲んでいるから大丈夫」などと言われる方のなんと多いことか。

 高血圧ガイドラインが改定されたことで、今後のお薬処方に影響が出るかもしれません。降圧剤の選択では、合併症として糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い方)、腎機能低下などがあればより低い(〜10mmHg)目標値になります。外来患者さんのかなりの方が高血圧症として来院されますので、お薬の選択についてもできるだけわかりやすくご説明いたします。確実に血圧を下げるお薬としてはカルシウム拮抗薬があります(商品名ノルバスク、アダラートCRなど)。心機能が低下した人にはβ遮断薬(商品名メインテート、アーチストなど)、腎機能の低下した人にはACE阻害薬/ARB(商品名レニベース、タナトリル/ ブロプレス、オルメテックなど)が勧められます。降圧効果が不十分な場合には少量の利尿剤(尿から塩分を排出させる薬)を追加することがあります。医師が症状も殆どない高血圧にこだわる理由は、多くの合併症を防ぎ健康寿命を確保したいからなのです。

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