心臓カテーテル検査 (cardiac catheterization)

 循環器内科医は様々な血管にアクセスして心臓や血管を治療します。通常手の橈骨動脈(手首の親指側に走行する動脈)や足の付け根(鼠径部)の浅大腿動脈にシース(さや)を挿入してそれを留置した状態でカテーテルを出し入れします。カテーテルは細いプラスチック製のチューブのことで、様々な形状のものが用意されており体の中を縦横無尽に進んでいくことができます。この時ガイドワイヤーという柔らか目の長い針金を先行させカテーテルを目的の血管へ導きます。カテーテルの手前側から造影剤を注射するとカテーテルの先から造影剤が血管に流しこまれ、レントゲン透視下で血管が綺麗に映し出されるという検査です。

  世界で一番最初に自分の血管内にチューブを入れ心臓まで到達させたのは1929年のドイツ人フォルスマンで、1941年カテーテルで心臓の生理機能を測定する方法を樹立したフランス人クールナン、アメリカ人リチャーズと共に1956年ノーベル医学生理学賞を受賞しています。その後、心臓の冠動脈造影法をソーンズ、ジャドキンスらが開発、ジャドキンス法は現在でも心臓カテーテル検査のスタンダードとなっています。

 1977年にドイツ人グルンツイッヒが太いカテーテルの中に、バルーンを仕込んだもう一つのカテーテルを冠動脈内に導くことで狭窄病変を広げる治療法(PTCA)に成功しました。その後カテーテル治療は改良の上にも改良を重ね、狭心症、心筋梗塞の治療法(PCI)として隆盛を極めています。それまでは胸を切り開いて行う冠動脈バイパス手術(CABG)が唯一の治療でした。現在ではバルーンで広げてステントという網目状の金属コイルを冠動脈に留置し長期に渡って血流を確保する方法が主流です

 高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などが原因で冠動脈の動脈硬化が進みます。心臓病は突然命を奪われることもある非常に恐ろしい病気ですが、狭心症の段階で早めに発見すれば比較的簡単にカテーテル治療を受けることができ、治療後の成績はほぼ確立しています。私は昨年まで心臓センター島原病院で16年間心臓カテーテル検査及び治療の経験を積みました。動脈硬化の可能性の高い方、胸痛など狭心症の疑いのある方はぜひ当院へご相談ください。

 

 

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