糖尿病についてあれこれ (Diabetes Mellitus)

 現代の国民病とも言われる糖尿病(昔は結核ですね)。治療の必要な患者さんは約500万人、予備軍(境界型糖尿病)約500万人と、合わせて1000万人もの糖尿病関連患者がいると見積もられています(成人の約10人に一人)。血糖値を低下させる唯一のホルモンである膵臓のインスリンが充分に分泌されなくなったり、インスリンは充分出ているけれども効き目が低下している場合(インスリン抵抗性と言います)血糖値が上昇します(2型糖尿病、全く分泌されない場合1型糖尿病と言います)。診断は血液検査で簡単につきます。空腹時血糖が126mg/dL以上、もしくはHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が6.3%以上が糖尿病と定義されています。

 糖尿病の恐ろしいところは高血圧症と同様に殆ど自覚症状がないということです。そして長年高血糖が続くと合併症が起きます。糖尿病の原因は主に遺伝、加齢、肥満、運動不足です。先進国では飽食と長寿、運動不足により糖尿病患者が激増しています(急速な近代化を成し遂げた中国でも深刻のようです)。3大合併症として糖尿病性網膜症(最悪失明する)、糖尿病性腎症(最悪腎不全〜人工透析生活になる)、糖尿病性神経障害(手足がビリビリしびれたり感覚がなくなる)が有名です。実はこれら(毛細血管障害)は数十年かけて進行するのですが、心筋梗塞、脳卒中などの命に直結するような重大な合併症(大血管障害)はより短期間に発症するのです。高血圧症、高脂血症、喫煙、飲酒、肥満、ストレスなど複数の動脈硬化増悪因子を合併した人に起きやすいのですが、怖いことに神経障害が進行していて胸痛など危険信号に気づかず、突然重症の急性心筋梗塞や脳卒中に見舞われます。そのため糖尿病患者の平均寿命はそうでない人に比べて約10年短いというデータがあります。

 糖尿病治療というとインスリン自己注射を連想される方も多いと思います。近年糖尿病治療新薬開発は目覚ましく、その人その人に合わせ、なるべく自分の膵臓に負担をかけない経口糖尿病薬が主流となっています。しかし、糖尿病治療の基本は食事療法であり、運動療法も大事です。当院では血液検査や尿検査で糖尿病を評価し、HbA1cを7.0%以下にすることを目標に薬物治療を行う一方、生活習慣のアドバイスと合併症の発見に務めています。

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