変わりつつある認知症治療 (Dementia therapy)

 厚生労働省によれば、日本人の急速な高齢化で認知症患者はすでに400万人に達し、高血圧患者1000万人、糖尿病患者300万人などと肩を並べています。昔から「ボケたらおしまい」と言ったネガテイブイメージがありますが、病気としてのメカニズムはかなり解明され、診断方法も確立してきました。認知症には大きく4つのタイプがあり、アルツハイマー病、脳血管性痴呆、レビー小体病、前頭側頭型認知症に分かれます(半分以上はアルツハイマー病です)。認知症と言っても物忘れや意欲低下などを主体としたタイプと徘徊や攻撃的、幻覚、抑うつなど行動や情緒面の症状が強いタイプがあります。残念ながら現在の認知症治療薬は根本的な薬ではなく効果が限定的であったり対症療法的なものしかありません。介護保険がスタートする前に私は地方の小さな病院に勤務していました。ある日、85歳の夫が長年の献身的な家庭介護の末、高度痴呆の妻の首をスカーフで絞め、自分も納屋で首を吊るという痛ましい現場に検視に行ったことがあります。顔見知りの患者さん夫婦で、普段から優しい夫と評判だっただけに「疲れた疲れた、ばあさんを道連れにして行きます」という書き置きを見て大きな無力感を味わったことは忘れられません。それに比べれば現在の介護保険制度の普及は隔世の感があります。しかし、介護ビジネスでパターン化されているとも感じます。近年、認知症を病気としてとらえ薬物で治療するのではなく、認知力が低下したり人格が変わったりしてきても、その人らしく扱うことの重要性が認識されています(ユマニチュード、バリデーション)。京都でも、2012年に認知症医療関係者(精神科医、内科医など)が集まって「京都文書」という指針を採択しました。早期の認知症患者を発見し住み慣れた地域で支えて行くことの重要性が強調されています。

関連記事

  1. 心の処方箋 (prescription by counsel…

  2. 糖尿病についてあれこれ (Diabetes Mellitus…

  3. 慢性腎臓病〜CKDとは

  4. 心臓リハビリテーションのすすめ (cardiac rehab…

  5. 心臓カテーテル検査 (cardiac catheteriza…

  6. 経口糖尿病治療薬について(oral drugs for di…

PAGE TOP