感染性腸炎について(Infectious gastroenteritis)

 病原体(ウイルスや細菌)が人間の腸に炎症を起こし、下痢、嘔吐、腹痛などを起こすことがあります。感染性腸炎と呼ばれ、人から人へ経口感染します。学校、保育園などで流行することもあり、当院では4月に多くの患者さんが症状を訴え来院されました。ノロウイルス、ロタウイルスが代表的で、冬から春にかけ流行します。ノロウイルスは貝やサラダを食べた後に起きることが多く、突然の水様性下痢で始まり、嘔吐します。家族や保育園などで二次感染しやすく、手洗いやドアノブなどの消毒が大切です。嘔吐物はすぐに処理しますが、十分処理しないと乾燥した吐物から空気感染することもあります。ロタウイルスは乳幼児に多い冬季下痢症として知られていますが、必ずしも便が白色になるとは限りません。ロタウイルスには新生児期に任意の予防接種があり、腸炎になった時腸重積の合併を防ぐ効果があります。診断には便の迅速キットがあります(当院では採用しておりません)。治療には有効な抗ウイルス剤は無く、整腸剤(ミヤBM)と経口補水液(OS-1など)が有効です。ミヤBMは腸内の正常細菌の回復を助け、経口補水液は点滴と同様に脱水症状を緩和する作用があります。一回30~50mlをこまめに与えます。対照的に、夏に食中毒を起こすのは細菌が多く、黄色ブドウ球菌、カンピロバクター、サルモネラ菌、赤痢菌、腸管出血性大腸菌(O-157など)などがあります。下痢がひどく粘血便が見られることもあり、多くが届出伝染病に指定されています。診断は便培養や血液検査で行います。重症患者には抗生物質で治療します。

 

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